エル・カザド(2007)

 全26話。

 オリジナルアニメ。監督は真下耕一、制作はBee Train

 西部劇調のロードムービー。前2作から一転、眩しい太陽が似合う陽気で軽快な作風で、魔女やら何やらといった設定の重さを余り感じさせない。主題や脚本はそこまで深いものではなく、謎の解明や過去の探求も若干消化不良なまま終わってしまう。そうした従来突出していた要素が削ぎ落とされた代わりに、百合成分が圧倒的なまでに強化され、ナディとエリスが終始いちゃいちゃしながら旅を続けるという百合好きには堪らない素晴らしい作品に仕上がっている。

 このアニメ、何と言ってもエリスが可愛い。「いえっさ」あざと可愛すぎる。女性に対してはイエスマムだろとか野暮な突っ込みはしない方向でお願いします。そんなエリスがナディと旅する内に初めて湧き上がる様々な感情を経験し、徐々に深い絆で結ばれてゆく。こうなるとバカップルの会話で尺はほぼ埋まり、もう視聴者はにやにや笑うのを止められない。特に第19話、百合夫婦だと認めたも同然の会話は、まさに尊いの一言に尽きる。ラスボスとの対決をあっさり終わらせ、最終話を丸々後日談に使った点にも、2人の関係性をきっちり見せようという百合に優しい心意気を感じる。ガチ恋愛でない作品で、ここまで純度の高い百合を精製したものが他にあれば教えてもらいたいくらいだ。

 整合性の『NOIR』、過剰性の『MADLAX』に比すと、さしずめ百合萌えの『エル・カザド』といったところか。完成度で幾分か後れを取り、中身の無さでは群を抜くものの、だからこそ百合の美しさを存分に味わえるように出来ているのだ。

[百合の分類]2-4.バディ