森永みるく『GIRL FRIENDS』(2008)

 全5巻。初出は双葉社コミックハイ!』他。

 少女漫画系ガール・ミーツ・ガールの金字塔。女子高生まりとあっこの初々しく瑞々しい恋模様を描く。奇を衒わず堅実に積み上げてゆく王道の展開はいっそ素朴とも言えるが、画面は贅沢なまでに女の子の可愛らしさと初恋の眩しさに溢れた華やかな作り。巻の最後をキスで引き、次巻をキスの回想から始めるという繰り返しでテンポを付け、引き締まった構成になっている。

 無駄な寄り道や冗長な引き延ばしをせず直球で勝負しているところが、惚れ惚れするほど潔い。自分の気持ちに気付いて告白し、擦れ違いを経て両想いになり、付き合ってゆく中でお互いの気持ちを確かめ合う。そんなどこまでもベタなストーリーを陳腐に感じさせないのは、背景の日常生活や人物の心理描写に一切手を抜いていないからだろう。目配りの行き届いた、完成度の高い作品だ。

 また、脇を固めるキャラクターも重要な要素の一つである。たとえば、まりやあっこの友人・すぎさんは、相談に乗りつつ二人を見守るという恋愛ものには付きものの人物造形だが、決して上から目線で理解者ぶっているわけではない。第4巻で「本当の恋」に出会えないと悩む彼女は、ピュアな二人を羨ましがると共に、自分も本命を作ろうと励まされているのだ。このように、ただ恋愛を讃美するだけでなく別の視点から相対化することで、改めて二人の恋の美しさを噛み締めさせられるのだ。

 百合の入門書としては最適だと評されることが多く、自分もその意見に同意するのだが、どうやら記事執筆時点で品切重版未定となっているようである。そんな冷遇には全く相応しくない名作であり、勿体無さに涙が出てくる。読み返す度にきゅんきゅんし、ぎゃあああああと叫びながらのたうち回って萌え死にそうになり、最後には極上の多幸感に酔いしれる。おすすめ。

[百合の分類]1-3.自覚と告白