林家志弦『ストロベリーシェイク』(2015)

 全1巻。初出はマガジン・マガジン百合姉妹』、一迅社コミック百合姫』他。『百合姫』移籍時に題名を『ストロベリーシェイクSweet』と改め、2006~2009年に全2巻が刊行。これを原題に戻し、描き下ろしを加えた新装版として集英社より発行された。

 芸能界百合コメの決定版。冒頭はドタバタなギャグ漫画という色彩が濃いが、話が進むにつれて恋愛に焦点が当てられてゆき、終わってみれば王道の純愛漫画だったという絶妙さ。メインCPだけでなく、脇を固める百合キャラ達も物語を大いに盛り上げ、どこを取っても面白くエンタメとして精緻に完成されている。だらだらと長引かせず、引っ張る所ではとことんやきもきさせ、畳む所では一気に片を付けるというような、ぴりっとした緩急の付け方も好印象。

 ヘタレな樹里亜×天然の蘭の初心でピュアな恋愛に萌えるのは当然のこと、本作を秀作たらしめているのはずばりZLAYである。「メンバー全員女の子しか愛せない」4人組スーパービジュアルバンドである彼女ら、登場した当初は単なるギャグ要員かと思いきや、笑える台詞を吐きつつも実はそれが状況を的確に総括していたり、樹里亜と蘭の恋を進展させるきっかけを作ったりと、狂言回し兼サポート要員として作品の根幹を支える役回りを担っているのだ。しかもその言動をいちいち面白く仕立てることで、不自然さを感じさせず高いテンションを維持している。もはや神業と言っていい。

 登場人物の中で個人的に一番好きなのも、やはりZLAYのベース担当・レキ。メンバーの中で最も正統派の可愛らしい外見でありながら、殆ど表情を変えずにツッコミを入れたり毒舌を吐いたりするのが素敵。いつも喧しく調子乗りなリョウが、レキには頭が上がらず尻に敷かれているという関係性がツボであった。

 読んでいて、こうした直球の恋愛はラブコメに昇華させるのが一番合っていると改めて実感した。逆にシリアスな路線であれば、恋愛の儘ならなさや不毛さに踏み込んだ変化球が丁度良い。だから大真面目にピュア百合やったり、逆に変化球で強引に笑いを取ろうとしたりすると結果的に失敗してしまうのかなぁと思ったり。

[百合の分類]1-3.自覚と告白