百合の散歩道

一介の百合好きによるレビューブログ。

仙石寛子『三日月の蜜』(2010)

 中編1本、短編11本。初出は芳文社まんがホーム』他。

 百合に限らず、異性愛、近親愛、人外など、一風変わった恋愛や恋愛未満の微妙な距離感を丁寧に描く。4コマ漫画の形式を取ってはいるが、4コマ毎に起承転結がきっかりあるわけではなく、単にコマが4つずつのストーリー漫画である。描画は繊細で温かく、また多くが恋愛の切なさを中心的に扱っており、これぞ少女漫画という味わい。

 百合を描いた作品は、全8話で構成された表題作、ほんわかした友情ものの「女子メガネ」、バニー×牛の「ちょっと早いけど干支」、王女×メイドの「一途な恋では」の4本。表題作は女×女×男の三角関係だが、軽い気持ちで付き合い始めた佐倉さんと桃子さんが徐々に惹かれ合ってゆくまでの感情の揺れ動きに寄り添っていて、むしろ直球のガールミーツガールと言えそう。「一途な恋では」は、春になれば姫が隣国に嫁いでしまうという悲恋百合。ただ叶わぬ恋を美化するのではなく、相手が自分の気持ちを信じてくれない、そんな恋なんて終わりにしたいという切ない想いに焦点を当てているところが実に読ませる。姫とメイドのユーモラスな掛け合いも楽しい。

 作者の真骨頂は、「ちょっと早いけど干支」のバニーさんと牛さんのいちゃいちゃに見られるような、人ならざるものがごく普通に登場する話だろう。「キラキラ青虫」は少年と青虫(♀)のヘテロものだが、二人(一人と一匹?)のコミカルな遣り取りがとても面白い。他にも雪男、人魚、守護霊など、独特の作品が多数収録されている。百合に留まらず様々な題材を同時に楽しめる贅沢な短編集だ。

 ちなみに、表題作の後日談が『この果実は誰のもの』に収録されている。カバー下で描きたいと言っていたBLも、これ以降に発表された作品で読むことが出来る。どれもおすすめなので、百合にしか興味がないという人も騙されたと思って手に取ってみて欲しい。

[百合の分類]2,3,6-CS