袴田めら『新装版 最後の制服』(2011)

 全2巻。初出は芳文社まんがタイムきららキャロット』『まんがタイムきららMAX』及び描き下ろし。2005~06年に刊行された全3巻をまとめ直し、つぼみシリーズにて改めて発行された。

 萌え系の可愛らしい絵柄に騙されてはいけない。女子高の学園寮で群像劇という、正統派の本格百合漫画だ。作中で「憧れの人の追っ掛け」に対する違和感を登場人物に表明させ、一時的な女子校のファンタジーとしての百合とは一線を画した点は天晴れと言う他ない。

 実る恋、突然の別れ、報われぬ想いと、物語は人によって様々だが、どれも真摯に、かつ温かく大切なものとして描いている。「体に触れたい」「もっと一緒に居たい」といった素直な気持ちに寄り添い、その延長線上に自然と性的な触れ合いも出てくるため、読んでいてとても納得できるし満ち足りた気分にさせてくれる。ノンケや男もしっかりと個性を持って登場し、作品世界に奥行きを与えている。ありふれた日常の風景、何気ない遣り取りの中にある、きらきら輝くかけがえのない時間を切り取った、何度でも読み返したくなる上質な作品である。

 各話の間に挿入されている「かってにさいごのせいふくこうさつ」が面白い。登場人物の絵の傍らに、キャラ設定や注目すべき萌え要素の短い説明が書き込まれており、作者の迸る愛と萌えへの飽くなきこだわりを感じさせられた。記号的な美少女キャラが氾濫する今日この頃、作り手の情熱は果たしてこれ程のものになっているのだろうかと思わず考えを巡らせてしまった。

[百合の分類]1-3.自覚と告白/1-4.駆け引きと対話